新緑が綺麗で、さわさわと吹く風が心地よい、1年で最もいい季節を感じさせる日曜日の朝、夫が行先に定めた場所は、横浜山手の西洋館巡りです。
5年前、「横浜初めて物語」と題するウオーキングに参加して、この辺りも歩いたのでイメージはありましたが、今回、西洋館巡りに的を絞って地図を見ながら歩いたことで、山手の地理のみならず、中華街、元町、山下公園などの位置関係がようやく頭に入ったように思います。
JR石川駅で下車して、山手の方、大丸谷坂(おおまるだにざか)を登りイタリア山庭園の洋館から見て行きました。
洋館の入り口では、イギリス館以外は、皆スリッパに履き替え中に入りました。建物は、大正末期から昭和にかけて著名な建築家に建てられ、日本に住んだ外国人のものであったり、外交官の家であったりですが、どれも大きなダイニング、豪華なシャンデリア、居間にはゆったりとしたソファがあり、食器棚にはきれいな絵皿が飾られているのが印象に残りました。
まずは、ブラフ18番邸です。1階では、ボタニカルアートの展覧会が催されていて、大きな窓からは新緑の光が眩しく、いいところに来たという気持ちにさせられました。
明るく広い庭を行くと隣は、外交官の家。こげ茶に縁どられた外観で重厚感がありました。このイタリア山庭園は高台にあるので、ここから横浜の街が一望できます。ビルの立ち並ぶ向こうには海が見えベイブリッジがかかっています。写生をする人、バイオリンの練習をする人がいたりして、長閑な雰囲気が漂っていました。
外交官の家の玄関はぐるっと回ったところにあります。1階には喫茶があり、ダイニング、居間などが同じように並んでいました。一部瓦屋根の部分もあり、広さのある建物でした。
ちなみに、この外交官の家だけは、明治に建てられこの場所に移築されたもので、国の重要文化財に指定されています。
外交官の家の門から上の道に出ることが出来、先を進んで行くと山手本通りに出ました。ここをしばらく歩いて、元町公園の辺りを目指します。途中の道には、一体どんな人が住んでいるのかと思わせる大きな家が立ち並んで想像を広げさせられます。横浜山手女子高校から変わった中央大学と書かれた校舎、フェリス女学院の特徴的な建物、カトリック山手教会などが目を惹きました。
次のエリアの洋館は、ベーリックホール、エリスマン邸、山手234番邸の3つ。
ベーリックホールは、山手本通りに面して入り口の門があり入っていけます。2階にはご子息の部屋、書斎、寝室とあり、思わず当時の生活に思いをはせてしまいます。どの部屋にもトイレと洗面、お風呂が一緒になった部屋がついています。大きな窓がいくつもあり広い部屋は、さどかし冬場は寒いことでしょうと思いますが、各部屋窓下にオイルヒーターが設置してありました。 当時は暖炉で暖をとっていたのでしょうか
エリスマン邸は、それまでの家と比べて、やや簡素な感じのする外観で、中もすっきりした仕様に感じました。楽譜を入れる箪笥が興味深く思いました。
山手234番邸に入る前に、もう2時になっていましたので、その隣にある洋館の喫茶、えのき邸に入ることにしました。ちょうど外の木々に囲まれたテーブルがあいていたので、外国気分で昼食をしました。
山手234番邸では、昔のミシン、三面鏡、絵皿のディスプレイが印象深く、1階は手工芸展、2階で子どもの絵本の読み聞かせが始まっていました。自然な語りで無理なくお話の世界にさそわれます。ここは以前アパート風連棟ハウスだったものを改造したということで、左右対称に部屋があり、真ん中に坪庭がありました。
ここから、また次のエリアまで歩いていきますが、ちょっと迂回して、元町公園の中に入っていくことにしました。中に入るには下に下って行かなくてはなりません。木々がこんもりしていることから、山を下って行く感じです。木々の間から、弓道の練習場が見えたのは驚きでした。プールがあり、プールに入るための棟はレンガ造りで重厚感があると思ったらそのはず、歴史のあるレンガのようでした。
また、上に登って行き元の道に合流。道の先左手には外国人墓地が開放されていましたが、立ち寄らず先を急ぎました。
最後の2つの洋館は港の見える丘公園をぬけたところにあります。
まずは、イギリス館。1階では貸切で使っている部屋があり、ドアの向こうから人のざわめきが聞こえました。可愛いテーブルセッテング、大きな窓、シャンデリアなど、ここまで見てくるとお決まりと思える家具が置かれていました。
最後は、山手111番邸。さすがに、洋館を見るのはもう堪能していましたが、頑張って中に入ってみると、ここは中々居心地のいい館でした。クラシックのピアノ曲が流れていて、小ぢんまりとしている割に開放的でおしゃれ。開放的なのは、2階から1階ホールが見下ろせる吹き抜け構造になっていたからでした。80年以上たつ古い建物ということで、2階は限られた日しか上がれず、この日は閉鎖されていました。
帰路の、海の見える丘公園からフランス山を下って行く道にも旧フランス領事館の味わい深い遺構が残されていて楽しめました。帰りは元町通りを通って石川町に戻りました。
丘陵地帯と海のある地形、港町横浜の魅力があらためてよく感じられたウオーキングでした。